看護師がステップアップのために取得する資格と言えば、かつてであれば保健師や助産師の資格がメインでした。これらの資格は看護師資格を取っていなければ取得できないものであり、これらを取得することによって、病院の外での医療や看護、これに携わる行政の仕事を行うことができるようになるので、看護師として現場で働く以外の道も開ける上に、看護師としての経験が十分に生かされる、まさにステップアップでした。

近年では、看護の現場により特化した認定看護師や専門看護師といった資格も登場しました。これらを取得することによって、一般の看護師よりも高いレベルで看護の仕事にあたる、看護師の指導にあたる、新たな看護技術や医療技術の開発や習得に携わるといった、医療現場における看護のスペシャリストとして活躍することができるようになったのです。これも、高度化が進む医療技術や、移り変わる世相によって変化する看護の現場に適応するためのステップアップです。

こうした中で、少し意外と思える資格が看護師のステップアップに有効であるとされるようになりました。救急救命士です。ご存知の通り、救急救命士は救急車に乗り込んで、緊急に発生した患者さんを病院に搬送するための医療行為を行うことのできる人の資格です。しかし、看護師も医師の指導の元に医療行為を行うことができるので、別に救急救命士の資格を持っていなくても気管挿管を除けば患者さんに対して医療行為を医師の指導の元に行うことができます。

それでは、なぜ救急救命士の資格を取ることが、看護師のステップアップにつながるのでしょうか。例えば、あなたが救急看護室に配属されたときはどうでしょうか。緊急性の高い重篤の患者さんを受け入れるのにおいて、看護学校でも学んでいるでしょうし、配属時にオリエンテーリングやカンファレンスで一応のことは分かっているはずです。しかし、人間いざという時には体が動かないものです。まごまごしていては同僚や医師の邪魔になってしまいます。

こうした時に、救急救命士の資格を取得するためにした勉強が役に立つのです。救急救命士の資格を得るまでに十二分に勉強してきたことが、緊急医療の現場において大変役立つのです。また、ドクターヘリに乗り込むフライトナースになることを希望するのであれば、看護師資格よりもむしろ救急救命士の資格の方が役立ちます。看護師が救急救命士の資格を得るのは、単に資格を取得してステップアップをするというのではなく、より救急現場における専門家、救急医療のスペシャリストになるためのプロセスなのです。